2008年11月14日

月の光

「よみがえる源氏物語絵巻」という番組を観ました。平安時代後期に制作された国宝「源
氏物語絵巻」。色が褪せ剥落が進んだ絵巻は最新の技術、そして日本画家の洞察と緻密
な作業によって鮮やかに復元されてゆきます。

「蓬生」の場面、荒れ果てた屋敷と光源氏たちとの間に大きく広がる空間には何が描
かれていたのか。

残されたほんの少しの絵の具と剥落の仕方を手がかりに元の絵が復元されていきます。
丹念に調べていくと、少なくとも10種類ほどのあえて美しいとされない草々が描かてい
たことが明らかになります、そして、雨の雫をまとった草は月の光に照らされていたので
はないかと推理されます。

零落した宮家の古風な姫。末摘花とは、鼻が赤いところから源氏がつけたあだ名で、美男
美女ぞろいの源氏物語の中では異色の不美人。源氏が須磨へ下った後はさらに暮らしは
困窮し屋敷は荒れ果てていた。須磨から戻っても彼女のことは忘れていた源氏がその屋
敷の前を偶然通りかかり訪れる。

雨が上がり月が出てきた夜という「蓬生」の場面を設定した作者の意図は・・・。月は場所
を選ばず、だれもが平等に見ることのできる希有なもの。貧しく忘れ去られた末摘花が再
び見いだされる場面は、そのような視点で描かれたものなのか。

「月は捨てるべきものをほとんど持たない貧しき者の顔を、家を、ひっそりと照らします。
月は持たざる者の味方であり、がらんとわびしい方が、その力を発揮できるのでしょう。」
芳賀徹という方の文章ですが、明るくまっすぐな月の光に照らされると、少し力がわいて
元気が出るような気がします。

 月の光はみつけます
 暗いさみしい裏町を
 いそいでさっと飛びこんで
 そこのまずしいみなし児が
 おどろいて眼をあげたとき
 その眼のなかへもはいります
 ちっとも痛くないように
 そしてそこらの破ら屋が
 銀の御殿にみえるように

金子みすずの童謡集「月の光」

源氏物語と金子みすずの詩、ここに相通じるものを見いだすとは以外でした。
ここ数日、月がきれいです。今夜はどうでしょう。

月の光

記念切手「源氏物語一千年紀」












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Posted by マルウチ at 17:47│Comments(1)T.V
この記事へのコメント
ゴージャスな虹の反対側に広がる夕焼けの空。
と思うまもなく、夕暮れの雲の間に間に満月の月・・・。

ドラマチックに変わる空は、人の心に喜びと安らぎを与えますよね。
自然の美しさの前では、どんな人も同じなのでしょう。

やっぱり、記念切手「源氏物語一千年紀」買われたんですね。
Posted by kittsan at 2008年11月15日 09:28
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    コメント(1)